2012年3月29日木曜日

横断性脊髄炎 / Transverse Myelitis - Paralysis Research Center


横断性脊髄炎(TM)は、脊髄の一部分が横方向にわたって炎症を起こすことによって発生する神経障害です。「脊髄炎」は、脊髄の炎症を意味し、「横断」とは、単に炎症の発生する部位が脊髄の横断面であることを示します。炎症の発作によって、ミエリン(神経細胞繊維を覆っている脂肪性の絶縁物質)が損傷または破壊されます。これが破壊されることによって、神経系統に傷が付き、脊髄内の神経と身体の他の部分との交信が中断されます。

TMの症状には、数時間から数週間にわたる脊髄機能の喪失があります。これは、通常、腰部の痛みや筋肉衰弱やつま先や脚の異常な感覚などの症状が突然発症することで始まり、その後急速に、麻痺や閉尿や排便制御の喪失などの重度な症状へと進んでいきます。

一部の患者は、まったくまたはほとんど障害を残さずに完治しますが、日常生活に支障をきたすほどの永続的障害が残る患者もいます。

脱髄は、通常、胸部で起こり始め、脊髄下部からの信号を必要とする脚の動きや排便・排尿の制御に障害が生じするようになります。


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横断性脊髄炎は、老若男女、および人種を問わず起こる疾病です。遺伝的な要因も見られません。毎年、10歳ないし19歳、および、30歳ないし39歳の年齢グループに新規患者のピークがあります。米国内では毎年、約1400件の横断性脊髄炎の新規症例が報告されており、約3万3000人の米国人が横断性脊髄炎による障害を持っています。

横断性脊髄炎の正確な原因はまだ判明していません。脊髄を損傷させる炎症は、ウィルス感染症、特異免疫反応、または脊髄にある血管への血液流不足によって起こることがあります。横断性脊髄炎は、梅毒、はしか、ライム病の合併症や、水疱瘡や狂犬病のワクチン接種によっても発生することがあります。

ウィルス説

横断性脊髄炎は、水痘帯状疱疹ウィルス(水疱瘡や帯状疱疹を引き起こすウィルス)、単純ヘルペス、サイトメガロウィルス、エプスタイン-バー・ウィルス、インフルエンザ、エコーウィルス、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、A型肝炎、風疹などのウィルス感染後に発症することがあります。細菌性皮膚炎、中耳炎、細菌性肺炎も、横断性脊髄炎に関連していることがあります。


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TMの感染後の症例では、通常身体を外来の異物から保護する免疫系が、誤って自分の身体の組織を攻撃し、炎症を引き起こし、場合によっては脊髄内のミエリンを破壊してしまうと信じられています。

横断性脊髄炎は、急性(数時間から数日間にわたって発現)と亜急性(1ないし2週間にわたって発現)の両方があります。横断性脊髄炎に関する典型的な特徴は、(1) 脚や腕の衰弱、(2) 痛み、(3) 感覚の変化、(4) 排便・排尿異常の4つです。ほとんどの患者は、脚に様々な程度の衰弱を経験します。患者によっては腕にもこの症状を経験することがあります。病気が数週間にわたって亢進すると、脚の完全麻痺に至ることがあり、そのときには車椅子の使用が必要になります。

痛みは、約半数の横断性脊髄炎患者に起こる一次症状です。腰部に集中する痛み、もしくは、脚や腕の先にかけて、または、胴体周囲に、鋭い突き刺すような感覚の痛みとして感じられます。最大80%までの横断性脊髄炎患者は、身体の敏感な部分に衣服や指が軽く触れても、著しい不快感や痛みを感じると訴えます(異疼痛と呼ばれる状態)。また患者の多くは、気温が変化したり、極めて暑い日や寒い日に身体が敏感になることを経験します。

医師は、患者の病歴を調べたり、神経学的検査を行って、横断性脊髄炎であるか否かの診断を下します。


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治療法

他の多くの脊髄障害と同様に、横断性脊髄炎には効果的な治療法は確立されていません。治療法は、症状を管理して軽減することに重点が置かれ、また、神経学的相関によって治療法が大きく異なってきます。一般に、患者が初めて症状を経験したときに治療が開始されます。炎症を抑えるために、発症後の最初の数週間、コルチコステロイド療法が処方されます。

最初の療法の後における治療の最も重要な部分は、神経系が部分的または完全に自然回復できるように、患者の身体機能を維持させておくことです。このために、人工呼吸器が必要となることもあります。

麻痺などの急性症状を呈する患者は、普通、麻痺患者が呈する問題を予防・治療する特別の医療チームが配属されている病院またはリハビリ施設で、治療されます。その後、患者が手足を動かせ始めるようになったら、筋力や協調や一連の動きを改善するため、物理療法が開始されます。

予後


横断性脊髄炎の回復は、発症後2週間ないし12週間で始まり、最高で2年続くこともあります。しかし、最初の3ヶ月ないし6ヶ月間で改善が見られない場合、著しい回復はまず望めません。横断性脊髄炎の患者の約三分の一は、かなりもしくは完全に治癒します。別の三分の一は、ある程度治癒しますが、痙性歩行や感覚不全や尿意急迫や失禁などの症状が残ります。残りの三分の一はまったく回復しないため、車椅子を使用したり、基本的な日常生活を他人に頼らざるを得なくなります。

神経病および脳卒中国立研究所(NINDS)では、TMおよびその他の自己免疫疾病や自己免疫障害における免疫系の役割を解明する研究のサポートを行っています。他の業務として、細胞移植を用いたアプローチを含む、脱髄した脊髄の修復の研究に力を入れています。こうした研究の究極の目的は、ヒトの復元能力を助長し、麻痺患者の身体機能を修復することにあります。

出典: 国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)、横断性脊髄炎協会



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