2012年4月11日水曜日

最新の栄養学理論1・・・肉・牛乳・脂肪・油


動物性タンパク質の過剰摂取の害

これまで、肉・牛乳(乳製品)・卵は、栄養価の高い食品と考えられてきました。これらの食品はスタミナをつけ、欧米人のような頑強な体をつくると言われ、積極的に摂るように勧められてきました。肉・牛乳・卵は、まさに「欧米型食事」を形成する中心的な食品です。

必須アミノ酸を含む食品は、私たちの健康維持のためには不可欠です。そして肉や牛乳・卵などの動物性食品には、この必須アミノ酸が豊富に含まれ、理想的なタンパク源となっています。従来の栄養学では「完全タンパク質食品」と呼ばれ、重要視されてきました。

しかし科学の最前線にある生化学栄養学・現代栄養学は、これまでの常識を覆し、動物性食品の摂り過ぎによる、さまざまな弊害を明らかにしています。「タンパク質の過剰摂取の害」を、科学的に明確にしています。

動物性タンパク質の過剰摂取

穀類・豆など植物性のタンパク質を含む食品には、食物繊維や炭水化物なども多く含まれています。そのためたくさん摂っても、タンパク質の過剰になるほど食べ過ぎるようなことはありません。一方、肉類などの動物性食品を多食すれば、簡単にタンパク質の過剰摂取を招いてしまいます。

現代栄養学では、タンパク質の必要量の目安を、大人では体重1kgにつき、1日に0.8〜1gとしています。つまり体重60kgの人では、48〜60gが適量ということになります。現在アメリカ人のタンパク質の平均摂取量は約90gですから、およそ体重90〜110kgの人の必要量に相当する量を摂っていることになります。これでは、いくら体の大きいアメリカ人であっても過剰摂取と言えます。

ところが1988年度の厚生省(当時)の調査では、日本人の大人のタンパク質の摂取量は、およそ80gにものぼっています。アメリカ人の体格に比べ圧倒的に小さな日本人が、ほぼアメリカ人並にタンパク質を摂っているのです。必要量の2倍近く摂っていることになります。アメリカ人でさえも摂り過ぎなのに、最近の日本人は、それ以上に過剰摂取に陥っているということです。(※タンパク質の摂取源から見たとき、アメリカ人に比べ日本人は植物性食品からの摂取が多いのですが、現在では半分以上を動物性食品から摂っています。)

大腸ガンの原因となる

肉の過剰摂取に、食物繊維の不足が加わって「大腸ガン」が引き起こされると言われています。動物性タンパク質を大量に摂ると、食べたものが十分に消化・吸収されないまま大腸に至り、腐敗を起こすようになります。そして腸内環境が悪化し、硫化水素・インドール・メタンガス・アンモニア・ヒスタミンなどの多くの毒素・発ガン物質がつくり出されるようになります。こうした強烈な組織毒が、人体の老化を早め、ガンをはじめとする多くの成人病を引き起こすことになるのです。

さらに肉に含まれる大量の脂肪によって、いっそう腸内環境が悪化し、発ガン物質が多量につくられるようになります。加えて食物繊維の不足が、発ガンを促進することになります。間違った食事により腐敗し、毒素をため込んだ"便"が長時間にわたって腸内にとどまることで、発ガン物質の吸収が高まってしまうのです。肉食の増加にともない、大腸ガンは確実に増え続けています。

アレルギー反応を引き起こす

タンパク質過剰摂取の弊害の1つがアレルギーです。アミノ酸に分解されていない大きな分子のタンパク質(未消化タンパク質)が、腸壁から吸収され、血液中に運ばれることがあります。そうした未消化タンパク質が免疫系によって「異物(アレルゲン)」として認識されると、アレルギー反応が引き起こされます。そして、かゆみや湿疹・腫れ・くしゃみなどの症状が現れるようになるのです。アトピーや喘息には、こうした「食物アレルギー」が大きくかかわっています。

現代人が好む肉や牛乳・卵は、アレルゲンになりやすい食品です。日本人はもともと穀菜食民族で、穀類や豆類・魚からタンパク質を摂ってきました。それが短期間のうちに、大量の肉や牛乳を摂るようになったのですから、体はそれをうまく処理することができません。

高タンパク食品は、それ自体がアレルゲンになるとともに、腸管(腸壁)の透過性を高め、さらに未消化タンパク質を引き込んでしまうことになります。多くの現代人は動物性のタンパク質を多食することによって、腸壁のバリアー機能を弱らせています。特に子供の場合は腸が十分に発達していないために、深刻なダメージを受けることになります。こうしたことが繰り返され、腸の炎症やむくみ・下痢などが起こり、いっそうアレルギーがひどくなるのです。

最近、大腸炎やクローン病といわれ、腸の炎症や潰瘍・下痢などに苦しむ人々が増えていますが、動物性タンパク質の過剰摂取が、その大きな原因となっています。


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カルシウムの喪失と、骨と歯の弱体化

大量に摂取され血液中にあふれたタンパク質(アミノ酸)は、最終的には尿として体外に排泄されることになりますが、その過程で消化器系全体や、肝臓・腎臓に負担をかけることになります。過剰なアミノ酸が分解されると、毒性の強い窒素残留物(アンモニア)が生成されます。それは肝臓で処理され、無毒な尿素に転換されます。そして腎臓の働きを通じて、尿として排泄されることになります。このようにタンパク質を多量に摂ると、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、大きな負担をかけることになるのです。

尿素が増えてくると、それを尿として流し出すために、体は多くの水分を必要とします。そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類も排泄されてしまうことになります。尿素の排泄がスムーズに行われないと有害な尿酸が生成され、関節にたまって痛風を起こすことになります。(※こうした要因以外に、痛風の発症にはストレスが大きくかかわっていると言われています。)

また大量のアミノ酸が分解されると、血液は急激に酸性に傾き、それを中和するためにカルシウムやマグネシウムが必要とされます。それらが血液中に不足していれば、骨や歯から溶かし出して補うことになります。

さらに肉類は典型的な酸性食品で、カルシウムに対するリンの比率はおよそ50倍にもなっています。血液中のカルシウムとリンの比率は1:1に保たれていなければなりませんが、肉を多く摂ることで、そのバランスが大きく崩れてしまいます。その結果、血液中の酸・アルカリ濃度を調節するために、いっそう骨や歯からカルシウムが溶け出すことになります。

このようにタンパク質を大量に摂ることによって、カルシウムなどのミネラルが失われ、骨の弱体化が急速に進行することになります。肉を多食する先進諸国では、骨粗しょう症が多発しています。日本においても、動物性タンパク質の摂取が増えた昭和30年代以降、骨粗しょう症や骨折など、骨の異常が急増しています。

※肉の大量生産と汚染の問題

今、私たちが食べている牛肉は、牧場でのんびりと草をはんで育った牛の肉ではありません。その大半が工業製品と同じように、大量生産システムによって飼育された牛の肉なのです。それは豚肉・とり肉も同様です。

家畜たちは、終日、身動きもままならない環境に置かれ、ただエサだけを与えられ飼育されています。それでは病気になるのは当たり前です。そこで病気を防いだり肉質をよくするために、大量の抗生物質・ホルモン剤がエサと一緒に投与されることになります。現在では、そうした化学薬剤や耐性菌が肉の中から検出されることは、日常茶飯事となっています。

平成14年度の横浜衛生局の食肉検査統計では、牛と豚の検査頭数の約73%に異常が見られ、肉の一部が廃棄処分になっています。つまり家畜の大半が病気だということです。そして、その病気の家畜の肉を、国民が食べているということです。

数年前から、ヨーロッパやアジアを中心に狂牛病や口蹄疫が大流行してきました。また一昨年(2002年)秋には、日本でもついに狂牛病が発生し大騒動になりましたが、それは、家畜という生命体を異常に扱った結果なのです。

「牛乳信仰」の弊害と、カルシウム・パラドックス・・・牛乳は悪い食品!?

これまでの「牛乳信仰」

肉や卵と並んで、これまでの栄養学で、栄養価の高い優れた食品と言われてきたのが牛乳です。「カルシウムを摂るなら、まず牛乳!」というほどに、家庭でも学校でも牛乳を飲むことが勧められてきました。日本人は欧米人と比べてカルシウムの摂り方が足りない、牛乳を飲めば彼らのように体格がよくなると、国民の大半が信じ込んできました。まさに「牛乳信仰」ともいえる思い込みが浸透してきました。特に成長期の子供たちや妊婦、骨粗しょう症の心配のある閉経後の女性には、牛乳を摂ることが積極的に勧められてきました。

しかし牛乳も肉と同様、決して健康によい食品ではありません。確かにカルシウムは必須ミネラルとして、人間の体にとって不可欠な栄養素です。そして牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。といって、牛乳を飲めばカルシウムが十分に補われ、健康になれるというものではないのです。実際、世界で最も牛乳を多く飲むノルウェー人の骨折率は、日本人の5倍というデータがあるのです。

現在では、牛乳を飲むことは健康にプラスになるどころか、かえって深刻な弊害を引き起こすことが明らかになってきました。アメリカでは一般の医師でも、妊婦や骨粗しょう症の患者に牛乳を勧めるようなことはしません。欧米の医学関係者の間では、牛乳は健康によい食品でないことが常識化しつつあります。

カルシウムの含有率と吸収率の問題

これまで牛乳は、カルシウムの"含有率"が高いから体によい食品とされてきました。しかし単に、含有率が高ければよいというわけではありません。牛乳をたくさん摂った場合には、腸からの吸収を抑えるといった形でカルシウムの吸収を調整するようになります。その結果として、カルシウムの排泄が促されることになります。


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そこで問題となるのが、カルシウムだけでなく、他のミネラルや栄養素も一緒に排泄されるようになるということです。(※海外の研究では、カルシウムを多く摂ると便の中のマグネシウムの排泄量が25%も増加し、吸収も抑制されることが報告されています。)

また、牛乳に含まれるカルシウムは"吸収率"がよいから、カルシウム不足の解消に役立つと信じられてきました。今でも盛んにこうした宣伝がなされています。しかし、この見解にはたいへんな問題が含まれています。

まず、本当に牛乳に含まれるカルシウムは吸収率がよいのか、ということです。これについてはさまざまなデータがあって、いまだにはっきりとした結論は出ていませんが、一般には牛乳のような動物性食品のミネラルは、野菜などの植物性食品のミネラルと比べ吸収率がよいとされています。(※最近では、野菜に含まれるカルシウムの方が吸収がよいという報告もあります。)牛乳では10〜30%ぐらいのカルシウムが吸収されると言われています。

さて、牛乳のような高カルシウム食品を摂った場合には、急激に血液中のカルシウム濃度が高まることになります。カルシウムの「吸収率がよい」ということは、このように――「飲んですぐに、血液中のカルシウム濃度が高くなる」ということです。

しかし私たちの体には、ホメオスタシス(恒常性維持機能)という働きが備わっていて、血液中のカルシウム濃度は、常に一定の割合に保たれるようになっています(※1CC中、9〜11mg)。カルシウム濃度がこの割合を超えて高まると、急いで排泄しなければなりません。早急に排泄しないと、さまざまな障害が生じるようになるからです。

そこで腎臓は、カルシウムを尿から流し出すために、ピッチを上げて働くことになります。それには多くのエネルギーが必要とされ、腎臓に余分な負担がかかることになります。そして過剰なカルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・鉄などのミネラルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足が進むことになります。

このように牛乳に含まれるカルシウムの吸収率がよいということは、人体にとって必ずしもプラスとはなっていないのです。(※カルシウムとマグネシウムの尿からの排泄量には、相関関係があることが確かめられています。つまりカルシウムの排泄量が増せば、同じようにマグネシウムの排泄量も増すということです。)

深刻なマグネシウム欠乏を引き起こす

ミネラルの不足は健康に大きなマイナスを及ぼしますが、なかでもマグネシウムの欠乏は深刻です。マグネシウムは、ミネラル間のバランスをとるためのポイントとなる重要なミネラルです。マグネシウムの欠乏は、細胞内外のカルシウム・カリウム・ナトリウムのバランスを崩し、それらが果たしている、さまざまな生理作用を狂わせることになります。この4つのミネラルの細胞内外での比率が守られることで、酸素や栄養素の運搬・神経や筋肉の働き・ホルモンの分泌などが正常に行われるのです。(※「細胞外ミネラル」であるカルシウム・ナトリウムは細胞外液に多く存在し、「細胞内ミネラル」のマグネシウム・カリウムは細胞内液に多く存在しています。)

またマグネシウムには、酵素の働きを助ける触媒作用があります。マグネシウムが不足していると、酵素は十分に働くことができません。マグネシウムはありとあらゆる酵素の働きに関与しているため、その欠乏は全身の代謝に決定的な影響を及ぼすことになります。

血液中のマグネシウムの欠乏状態が続くと、これもホメオスタシスの働きによって、マグネシウムが骨や細胞から溶け出すようになります。骨は多くのミネラルから構成されていますが、生命維持にかかわる重要なミネラルの不足に備えて、その貯蔵庫ともなっているのです。

成人の体には、カルシウムは約1kg存在しますが、マグネシウムは25gにすぎず、その差は40倍以上です。そのうちカルシウムの99%、マグネシウムの約60%は骨にあります。つまり骨には圧倒的にカルシウムが多く存在し、マグネシウムは、その60分の1程度しかないということです。

そうしたもともと少ないマグネシウムが溶け出すと、骨の中でのマグネシウム欠乏は深刻な状態となり、骨の形成がうまくいかなくなります。マグネシウムが不足していては、いくらカルシウムがあっても骨の代謝はスムーズに行われません。骨粗しょう症や骨のトラブルを防ぐために牛乳を飲むことで、かえって骨の弱化という、逆の結果を招くことになるのです。

「カルシウム・パラドックス」――実はマグネシウム不足による現象

現代人のマグネシウム不足は、きわめて深刻な事態を迎えています。食事から摂取するマグネシウムの絶対量は少ないうえに、ストレスや激しい運動・過労・過食など、その消耗要因があふれています。そうした状況において、多量の牛乳が摂取されているのですから、体内のマグネシウム欠乏はいっそう進むことになります。


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血液中のマグネシウムが不足すると、骨や細胞から補われることを述べましたが、その際には、一緒にカルシウムも溶け出します。実際にはマグネシウム不足であっても、骨にはカルシウムが大量に含まれているので、カルシウムの方が多く溶け出すことになります。(※これを「カルシウム脱灰」と言います。骨を構成するミネラルには、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム・リンなどがありますが、マグネシウムの不足が引き金となって、主要な骨ミネラルの溶出が起こるのです。)

こうして骨から溶け出したカルシウムの一部が、マグネシウムが抜け出た(マグネシウム不足の状態にある)細胞内部に入り込むことになります。カルシウムは大切な栄養素ですが、細胞外ミネラルであるため、細胞の中にそれが増えると、細胞の働きが損なわれることになります。細胞内に入ったカルシウムは"毒"ともいえる存在で、細胞全体・身体全体の機能低下を引き起こすことになります。(※カルシウムの細胞内液での濃度に比べ、細胞外液での濃度は千〜1万倍も高くなっています。これが細胞内外におけるカルシウムの正常な比率ですから、余分に細胞に入り込んだカルシウムは、すばやく追い出さなければなりません。)

そこで細胞内に増加したカルシウムを、細胞外に汲み出すことが必要になりますが、その働きを担っているのが、細胞膜にあるポンプなのです。しかし、このポンプはマグネシウムがないと働くことができないようになっています。マグネシウムが不足していると、ポンプの働きが低下し、カルシウムを汲み出すことができなくなります。

細胞に沈着したカルシウムは、細胞や組織を硬くし(石灰化)、動脈硬化を招き、心臓・血管系の病気を引き起こすことになります。また腎臓結石・胆石など、結石症の原因ともなります。さらに関節に溜まれば関節炎、免疫細胞に入り込めばアレルギーなどをひどくし、ガンや多くの現代病の誘因ともなります。

ここまで「マグネシウム」に注目して、その欠乏が引き起こす、さまざまな問題点を見てきました。この流れを「カルシウム」の観点から見ると、―「骨のカルシウムは減少する一方で、細胞の中には溶け出したカルシウムが溜まる」という奇妙な現象が生じることになります。不足と過剰という相反する状態が同時に存在することになるのです。これが「カルシウム・パラドックス」です。

カルシウムの観点だけから眺めると、矛盾して見えるこの現象も、マグネシウムの観点から見れば、すべて矛盾なく説明されることです。マグネシウムの欠乏こそが、「カルシウム・パラドックス」の根本的な原因なのです。

現代人は、マグネシウムを多く含む緑色野菜や海藻、豆類や種子類などを摂らなくなっています。また穀類からも、精製によってマグネシウムが減少しています。それに加えてマグネシウムは、ストレスや過労などによって著しく失われやすいミネラルです。

こうした深刻なマグネシウム欠乏の状態では、カルシウムは十分摂っているはずなのに、骨の中のカルシウムは減少し、細胞にはカルシウムが詰まるという異常な事態が発生することになってしまいます。これが一般的に言われる、「カルシウム・パラドックス」の実態なのです。

「骨粗しょう症」を引き起こす

老齢化社会の到来を迎え、骨粗しょう症の予防のために、「カルシウムを多く含む牛乳を飲みましょう」と盛んに言われています。しかし、ここまで述べてきたように、牛乳を飲んでも骨粗しょう症を防ぐことはできません。むしろ牛乳のような高カルシウム食品を摂ることで、骨からカルシウムが失われてしまっているのです。

疫学的なデータにも、それがはっきりと示されています。シンガポール人は、平均的アメリカ人の3分の1程度しかカルシウムを摂っていませんが、骨折率はアメリカ人の5分の1にすぎません。カルシウム摂取率の少ない国々の方が、どこも骨粗しょう症の発症率が低いのです。先に、牛乳を大量に摂ることで他の必須ミネラルや栄養素が体外に排泄されてしまうことを述べましたが、それによって骨の形成に必要なミネラルが失われ、強い骨がつくられなくなるのです。

食品中のカルシウムの吸収率が低い(※血液中のカルシウム濃度が、ゆっくりと上がる)ということは、人体にとって悪いことではありません。体内での利用のスピードに合わせて、ゆっくりと吸収されるのは、むしろよいことなのです。体の必要性に応じて徐々に吸収されるのは、自然なことなのです。(※牛乳には脂肪が多く含まれているために、カルシウムの吸収が妨げられるという説があります。摂取されたカルシウムは、小腸の表面においてカルシウムイオン化し、吸収されるのですが、そこに脂肪が入ってくると不溶性のカルシウム塩がつくられ、吸収が阻害されるというものです。牛乳のカルシウムの吸収が「よいか、悪いか」については明らかではありませんが、牛乳を摂ることには、多くの問題があるのです。)


いずれにしても、カルシウムの摂取を牛乳に頼る必要はありません。穀類や豆類・野菜・海藻・ゴマなどにも、カルシウムは十分含まれています。そうしたカルシウムこそが、体内で有効に活用されるのです。それらの食品には、カルシウムだけでなく、骨の形成に必要な他のミネラルやビタミンも豊富に含まれています。

菜食主義をしてきた人々に骨粗しょう症が少なく、牛乳を飲む人たちほど多いのは、このような理由によるのです。(※骨粗しょう症の原因は、単なるカルシウム不足だけではありません。食生活に、遺伝的要因・運動不足・性ホルモンの減少などが加わって起こるものですが、ミネラル摂取の欠陥が重大な要因となっています。)

「乳糖不耐症」の問題

牛乳が人間の健康にとってマイナスとなることは、「乳糖不耐症」という問題によっても明らかにされます。母乳や牛乳には乳糖(ラクトース)と呼ばれる糖分が含まれていますが、それは「乳糖分解酵素(ラクターゼ)」によって分解され吸収されます。

この酵素の活性は赤ちゃんが生まれた直後にピークを迎え、離乳期にはその活性が低下し大人と同じレベルになってしまいます。そして替わって、「デンプン分解酵素(アミラーゼ)」の働きが活発になってきます。つまり赤ちゃんは、乳糖分解酵素の減少とともに乳離れを迎え、少しずつ自分で食べ物を摂れる体へと変わっていくのです。この生理的変化は――「もうお乳よりも、ご飯から栄養を摂るのがふさわしい」ことを示しています。人間には、このような自然な形で"乳離れ"をしていくシステムが備わっているのです。

農耕を主として生活してきた日本人の大半は、欧米人に比べてラクターゼの活性は低く、大人では80%くらいの人に、この消化酵素が不足しています。これが「乳糖不耐症」です。乳糖不耐症の人が牛乳や乳製品を摂ると、乳糖は小腸で吸収されず、そのまま大腸にいくことになります。そこで大腸菌によって分解され、ガスと酸を生じ、腹痛や下痢、おなかが張ったり、ゴロゴロするなどの症状を引き起こします。そして下痢によって、腸内の栄養素は体外に排泄されてしまうことになります。せっかくカルシウムを摂るつもりで牛乳を飲んでも、カルシウムは乳糖と一緒に排泄されてしまうのです。また腸内細菌のバランスも、大きく崩されることになります。(※乳糖不耐症の程度は人によって異なり、下痢を起こさない人もいますが、栄養の利用が妨げられていることに変わりはありません。)

ある食べ物が「下痢を起こす」というのは、それが体に有害な食品であることを意味しています。体に悪いものであるために、身体に備わった防衛機能によって体外に排泄されることになるのです。この点からも、牛乳は健康にとって「マイナスの食品・悪い食品」であることが明らかです。

さらに乳糖の中のガラクトースが体内で分解できないため、それが目の水晶体にたまって、白内障の発症に関係していると言う研究者もいます。

アレルギー反応を引き起こす

さらに牛乳には、次のような問題があります。牛乳の中に含まれているタンパク質(カゼイン)が、アレルギー反応を引き起こすということです。先に肉の箇所でも触れましたが、普通、タンパク質は胃や腸の消化酵素の働きによって分解され、アミノ酸になって吸収されます。

ところが人によっては、アミノ酸になる前の「ペプチド」という形で腸壁のバリアーを抜け、吸収されることがあります。これは、腸が十分に発達していない幼児によく起こります。こうした未消化のタンパク質は、体内においてアレルゲンとなり、アレルギー反応を引き起こすことになります。これが牛乳アレルギーです。

カゼインは、「カード・凝乳」と言われる消化されにくい膜をつくり、消化器官に負担をかけます。現在の牛乳はすべて加熱殺菌を施され、"酵素"が破壊されていますから、それがいっそう体に悪影響を及ぼすことになります。母乳で育てられた子供は、牛乳で育てられた子供に比べ、アレルギーや他の病気になりにくいと言われています。それには、免疫の働きが母乳を通して赤ちゃんに伝わるということだけでなく、酵素の有無もかかわっているものと思われます。またカゼインは、粘液を増やし、喘息・気管支炎・副鼻腔炎などを悪化させる原因ともなっています。

現代栄養学の立場からは、牛乳とアレルギーの関係は明らかです。アレルギーの治療において、牛乳・乳製品を断つのは常識的なことと言えます。実際、牛乳をやめるだけで大きく改善されるケースがよくあります。

牛乳には、母乳の3倍ものタンパク質、4倍ものカルシウム、6倍ものリンが含まれています。それは胃袋が4つもあり、1〜2年で成長する牛にとってふさわしい成分であって、人間には必要ありません。余計な成分が入れば、かえって消化不良を起こし、消化器官や肝臓・腎臓に負担をかけ、体を弱らせることになってしまいます。

また牛乳には、抗生物質やホルモン剤などの残留汚染物質の問題もあります。牛乳・乳製品の摂り過ぎが、大腸ガン・乳ガン・子宮ガンの一因になっているとも言われています。



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